2015年12月16日水曜日

マッチ売りの少女

もしも少女が「マッチを買って下さい」ではなく「誰か助けてください」とお願いしていたら、寒空の下で死ぬことはなかったのではないだろうか。

そんな鋭い指摘を『マッチ売りの少女を殺したのは誰か』という坂爪圭吾さんの記事で見かけ、原作を丁寧に翻訳した絵本を探して読みたくなった。

降雪の大晦日なのに壊れた窓を修繕できない生活。暴力を振るう父親。逃げた母親。唯一自分を愛してくれたおばあちゃんは死んだ。絶望的な家庭崩壊と孤独がさらりと示されている。

あぁ、少女は、生き永らえたいと思わなかったんだ。あまりに恵まれなさ過ぎた。その小さな人生は、少女に、生きたいと思わせることが出来なかったんだ。

大好きなおばあちゃんの幻を、マッチ全ての灯で引き留めたかった。幻が消えるなら、祖母のいる世界へ私も一緒にと、生命力の全てを以て懇願した。少女は幸せそうな美しい微笑みを浮かべて逝く。

目を閉じて「おやすみ」と祈りたくなる物語。

志津図書館で借りた『マッチうりのしょうじょ』
作クリスチャン・アンデルセン
訳やなぎや けいこ 絵アナスターシャ・アルチポーワ
ドンボスコ社 1996/10/1