2015年12月4日金曜日

はだかの王さま

「王様は裸だ」
この一言で世界中の人が何の物語かわかる。凄いよね、誰もがどんなシーンかばっちり想像できるんだもの。だからみんな引用する。19世紀の童話作家アンデルセンが描いた『皇帝の新しい服』は、今の大人たちがこぞって、本や歌詞や社会記事のなかで「裸の王様」という喩えに使っている。私も自分のブログで使ったことがある。だって使いたくなるんだもの。実は大人向けなんじゃないか。子どもに読み聞かせようとすると、大人社会のリアルをえぐられて、大人こそが痛快。そこには時代も文化も超えて共感されてきた人間らしい問いとユーモアがあるのだ。

”自分の地位にふさわしくない愚か者には見えない服”
着たフリをする王様。見えるフリをする大臣、召使い、民衆たち。
王様を裸にしたものは何だろう。

もし王という『衣装』と同化することでしか、人間関係の喜びを体験させて貰えなかったのだとしたら、私もその幻想に執着したでしょうね。

志津図書館で借りた『はだかの王さま』
アンデルセン作  ISBN 4-924330-07-8
ドロテー・ドゥンツェ絵 ウィルムヘル・きくえ訳